
くつくつと笑ひだす粥春の風邪 岡田靖子 (『鷹』2001年6月号)
現在19日月曜日から28日水曜日まで実店舗のお休みをいただいておりますが、せっかくの休みというのに風邪で寝込んでいます。
実店舗では小学生以下のお子様連れをご遠慮いただいているせいか、学校の休みの日はお子さんがいらっしゃる女性やお孫さんの面倒を見ていらっしゃるお客さまのご来店がありません。そこで、春休みの間は実店舗はお休みにして、ふだんできない用事を片付けよう…と目論んだのですが、ひたすら薬を呑んで横になるのみ。ようやく峠を越えたものの、こういう時に読みたい本もなくて、もったいないなどと思っています。
『春の風邪』は、歳時記にも「それほどおもくはなく」、「あたたかくなった日ざしの中、家で休んでいたりして、情感がある。」と説明されているとおり、大したことはないというイメージがありますが、今回は春の風邪だからと侮って、あと1日…と無理をしたのが失敗。悪化させる原因になってしまいました。とにかく風邪は先手必勝。ずる休みのように思える段階で休むくらいでちょうどいいのかもしれません。もっとも、ひかないに越したことはありませんが。
ところで、風邪というと掲句のようにお粥ですが、私の場合、お粥は七草粥や小正月の小豆粥のみ。それ以外実際風邪をひいてお粥を食べたのは子どものとき以来ありませんが、ドイツにいたとき小学校の給食でMilchreisミルヒライスが出たことがありました。
このミルヒライス、どんなものかご存知でしょうか。映画『ベルリン天使の詩』のなかで、天使役のブルーノ・ガンツが読む≪Als das Kind Kind war, アルス ダス キント キント ヴァール≫「子どもが子どもだったころ」で始まる詩が何度となく挿入されるのですが、そのなかに≪wuergte es am Spinat,an den Erbsen,am Milchreis und am geduensteten Blumenkohl,≫と続く箇所がありました。これは、ほうれん草やえんどう豆、ミルヒライス、蒸したカリフラワーは飲み込むのに苦労した、苦手だったという意味で、パンフレットでは確かミルヒライスが単なるライスになっていました。どうやら訳者はミルヒライスを知らなかったようですが、ドイツで食べたライスは苦手ではないけれど、ミルヒライスは大の苦手の私からすると、ライスとミルヒライスは大違い!なのです。
Milchが牛乳ということがわかれば、牛乳で煮たReisと想像がつくと思います。現に、私がその数年後に買った『独和大辞典』には、「米を牛乳でやわらかく煮たもの」という説明がありますが、肝心の味の説明がありません。
ドイツでもReisを食べることは先日のチキンライスの回にふれたとおりで、給食で出た、ささみのソテーを生クリームのソースでかるく煮たものに付け合せのReisをあえていただくのは美味しかったことも記しましたが、これは違うのです。甘い!のです。要は、牛乳のお粥、牛乳のリゾットですが、塩気はなく、甘いのです。
ミルヒライスが昼の給食のときは、これ一品。ほかに、おかずもデザートもありません。私が何も知らず、初めて食べたときの驚きと言ったら!見た目は、具のない牛乳のお粥です。きょうのお昼はさみしい…とおもむろに一匙口に運ぶと、塩味の牛乳のお粥と思ったものが、甘い牛乳のお粥だったのです。
ありがたいことに、この学校では給食は全員がとるものではなく、1週間前に発表される献立を聞いて各人が希望する日のみ頼むというシステムでした。そのため、ミルヒライスのときはライ麦パンのサンドウィッチなどを用意することで、私は事なきを得ました。
もし、このミルヒライスが食後のデザートやおやつとしていただくのならば、よかったかもしれません。例えば、「ぜんざい」は好きでも、給食が「ぜんざい」だけだとしたら、喜ぶ子ばかりではないでしょう。
しかし、何といっても甘いごはんそのものに対する抵抗は消えません。もっとも、子どものころ私の家では、風邪をひくと、いわゆるお粥ではなく、食パンを牛乳で甘く煮た「パンがゆ」が定番でした。考えてみれば、牛乳と砂糖で甘く煮たものが、パンかごはんの違い。そのパンのほうを喜んで食べていたのですから、ミルヒライスのことをうんぬん言う資格もないかもしれません。なお、小正月のときに食べる小豆粥は、お粥にあらかじめ茹でた小豆と餅を入れて煮、塩で味を調えたもの。小豆だからといって甘いお粥ではありません。
写真は、ガスレンジの前のカウンター。ここ以外にあちこちに2階の本棚からあふれたペーパーバックを並べています。本は全て英語。子ども向けの本のほか、赤毛のアンやクリスティーなどもあります。
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